いつも前のめり

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カモミールティーの走馬灯【カナダ滞在の思い出】


最近、コーヒー飲み過ぎだな…と思って、コーヒーの飲む量を減らす代替品としてハーブティーを取り入れ始めた。

ジャスミンやローズマリーなど香りのいいものをローテしながら飲んでるんだけど、そのなかでも、ひときわ懐古を刺激する香りがある。

それがカモミールティーだった。

 

かつて、まだ学生でコーヒーも飲めなかった頃。

1ヶ月ほどをカナダで過ごしたことがある。

 

8月の二週目をすぎると、カルガリーは雪すらチラつく寒さだった。

語学学校への道のりは30分以上あって、手の中になにか温かいものを、とホストマザーが持たせてくれたのが「カモミールティー」だった。

カモミールティーを飲んだのは初めてだったけど、その美味しさと、お茶とは違うハーブの香りがちょっと背伸びをしているようでとても気に入った。

それからカナダに滞在している間はずっとカモミールティーを飲んでいた。

市販のティーパックも淹れて飲んだし、スターバックスでもたしか2.5ドルくらいでグランデのカモミールティーを注文できた。

授業中も、ショッピング中も、遊びに行くにもカモミールティーが手の中にあった。

 

そんなふうに、ほぼ水みたいにカモミールティーを飲んで過ごした1ヶ月だったんだけど、帰国してみるとカモミールティーって学生にはちょっと縁遠くて、手の中にあった温かさも香りも、すっかりカナダへ置き去りにしてしまった。

 

それからはコーヒーにハマってハーブティーを飲む機会もないまま過ごし、冒頭のような動機で、ひさしぶりにカモミールティーを口にした。

そしたらもう、キラキラがすごかった。

忘れてたのとか、最近思い出してないのとか、そんな記憶が箱をひっくり返したみたいに頭の中で溢れかえった。

特にすごいなって思ったのが、ただ思い出そうとして反芻してみたときより、質感や光が鮮明なこと。

芝生に反射する木漏れ日とか、急な寒さで乾燥した皮膚とか、湿度の高い雪雲の街とか、ふとした瞬間が一気に蘇った。

これってもしかして、走馬灯?

って、そんなことを思うくらい取り留めもないのに、心地よい記憶ばかり湧いてくる。

もちろん、それはどれもこれも、カモミールティーに起因して、カナダで過ごした思い出ばかりだ。

 

しかもこれ、たぶんだけど

私にとってのカモミールってもしかして一生このままカナダの記憶なのかもしれないなって思う。

だってほんと、新しい記憶で上書きしようにも、カナダの煌めきがあまりに良すぎる。

 

匂いの記憶は他の五感より最も強いなんていうけど、それも本当なんだろうな、って思い知らされた。

ちなみに今はハーブティーのなかでもローズマリーにハマってて、はたしてこの香りはどんな走馬灯を編集するのか、今からちょっとワクワクしてる。

 

 

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うっすらとまるい【カナダ滞在の思い出】

カナダに滞在したのは夏の1ヶ月ちょっとだった。

あちこちの公園は短い夏を謳歌するためにと、日光浴をする人たちでごった返していた。

私が居たのはカルガリーで、8月だというのに、2週間ほどで夏が終わって雪がチラつき始めたのはまあまあ衝撃的。

滞在先としていたお宅のホストマザーは、せっせと暖炉の準備をしていたし、「暖炉に火をくべる」という経験をしたのも、庭先にトナカイ(だったと思う)がやってくるなんていうのも初めて遭遇することだった。

 

ただそんな衝撃の多かったカナダで、最も記憶に残っているのは移動遊園地でのこと。

ちょっとした小高い丘の広場に移動遊園地がきたからって、みんなで遊びに行った。

アトラクションも色々とあって、その中で人気のあるうちのひとつが観覧車だった。

ドラマなんかで見る、爆速で回転する小さな観覧車ってわかるだろうか。

日本のように箱体に乗り込み、ゆっくりと回転するやつじゃなくて、二人がけのベンチが20席ほど付いてるだけのやつ。

アレに乗って、足をブラブラとさせながら、舌の色が変わるほど真っ青な綿菓子を食べていた。

それで、あの観覧車って回るスピードも早いから、何回もグルグル回って頂上と地上を行ったり来たりするんだよね。

そうするうちにも綿菓子を食べ終えちゃって、いつ終わるんだろうね~、なんて一緒に乗った子と喋ってるうちに、ようやく景色にも目を向けた。

そしたら、すっっっっっっごい遠くまで地平線が続いてて、当たり前なんだけど、めちゃくちゃびっくりした。

カルガリーって、カナダの真ん中あたりにあるんだよね。

だから、どこまでも広い地平線が終わりもなく遠くまで見渡せて、その向こうに霞んでぼやけるロッキー山脈がスイーっと横たわっていた。

私は大阪生まれ大阪住みなので、こういう広い平野というのにまるで縁がない。

北海道に行ったときも驚いたけど、カルガリーのこのしょぼい高速観覧車から見た景色は更に圧倒的だった。

 

とにかく地平が広くて広くて、それからうっすらと丸かった。

 

え、地球ってマジで丸いじゃん。

そんなことをグラグラしそうな衝撃でもって感じたのをはっきりと覚えている。

当たり前のことを「わかる」っていう感覚は、これが初めてだったと思う。

地球が丸いっていうのは知ってるけど、私は宇宙飛行士でもないので、実際にその丸い地球っていうのは見たことがない。

だから、うっすらとした丸さを見たのも、このときが初めてだったし、その丸みがずーっと続いて球体になってるんだ、と明確に想像できたのもこの時が初めてのことだった。

 

まるいんだ…。地球。

 

そんな衝撃を受けたカナダの滞在から、もう何年も経った。

私は今でもたまに、ふと「丸さ」の上で生きてるんだ…、と思い出すことがある。

 

私も誰しも、生まれて死ぬまで丸みのうえに立っている。不思議。

大阪観光どこいく?まとめ【ほぼミナミ】

かくかくしかじか……というわけで大阪を観光案内することになった私。

▼詳細はこちらの記事参照

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USJ、海遊館といったアミューズメント系も除外、さらに買い物目的というわけでもない、となるとほんとに「ひとはなにをもって”これぞ大阪”だと思うのか…」の境地に至るんだよね。

東京でも京都でもない、「これが大阪」とは…。いったい……。

なんかそういう思考でふんわりと試行錯誤した結果に訪れたあちこちのログ記事です。

よければ大阪観光の一助にしてください。

なお、個人的理由でミナミ周辺です。中之島以北は知りません。

 

▼今回利用した主な移動方法

・徒歩

・車(自家用車、タクシー、バス)

・レンタル自転車(大阪バイクシェア):大阪市内の観光なら大阪バイクシェアはかなり便利だと思います。駅から駅がまあまあ距離あるし、市内ならあちこちにスポットあります。

 

 

観る

大阪城

ド定番なんだけど、大阪城…。

駅からメチャクチャ歩くし、天守閣までもすげ~歩くんだけど、大阪城…。

天守閣付近には一応タリーズなどもあり、観光客の量にもよるけどちょっと休憩はできます。駅周りも、大阪城公園駅側は開発されてちょっとしたカフェやレストランなどもあります。

真夏以外はおすすめです。クルーズは昼以降だと予約完売してるかも。

森ノ宮駅・大阪城公園駅から利用する方が多いと思うんだけど、夜なら大手門側からのアクセスもライトアップが綺麗だよ。

いずれにしても「大阪城に行くためだけに大阪城へ行く」という行程を組める人向けではあります。もしくはホテル近いとかね。

ちなみに大阪城は「城がかっこいい」とか「歴史的」という観点よりも「市民の寄付で建て直された」という点から大阪人の誇りになっているような印象があるので(主観n=1です)、歴史的に「オー!ジャパニーズ!」みたいに感動されてるのを見ると「???」となりがちかもしれない。(大阪城天守閣 90年の歴史|大阪城天守閣復興90周年 1931-2021

ランニングコースであったり、花見スペースであったり、府民にとってはより生活密着型の印象なせいもあるのかな?(n=1です)

また、「大手門を入って、すぐの石垣の大手見付石。表面積が約29畳で城内4番目の大きさです。小豆島から運ばれてきたと言われ、一説には昆布を使って運び、そこから昆布文化が広がったとか」という昆布豆知識を披露すると、同行者に頭一つぶん差をつけることが出来ます。(諸説あります。参照:【大阪城 前編】大阪城に数多くある巨石! 実は関西人が好むものを使って運んだ!?|村瀬先生のぶらり歴史歩き

 

道頓堀

「これが見たかったんやろ!!」の道頓堀。

写真を撮るなら、橋の西側(TSUTAYAの対角線上あたり)を降りたところから巨大なグリコ看板を綺麗な画角で収めることが出来ます。この画角↓

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橋の上はとにかく人が多くてやばすぎて、通称「ひっかけ橋」なんて言われてるのに、いまは引っ掛けるスペースもありません。(商店街のみなさんが頑張って啓発したおかげでもあります)

あと忘れがちだけど、道頓堀は商店街の真ん中にあります。アーケードの屋根の下側と、御堂筋の道路側では趣も違うので、行きと帰りで違う道を歩いてみるのも楽しいかも。

他にも、大阪は有数の商店街めちゃたくさんある府で、市内だけでも50以上の商店街があります。そのうちのひとつは、日本で一番長い天神橋筋商店街。それぞれ特色があって楽しいよ。

ちなみに、御堂筋など「〇〇筋」という道は南北を縦断し、本町大通りなど「■■通り」は東西をズドンと横断しています。タクシー乗るときとか便利かも。ネイティブは「◎◎筋を北へ、××通の角を東へ」と言ったりします。ぜひチャレンジしてみましょう。東西南北がわからなければ、空を見上げて太陽の位置を確認してね。雨の日は知らん!

 

法善寺横丁

昨日の記事にも書いた法善寺横丁。紐解けば夫婦善哉の舞台になったとか色々あるんですけど、場所としては石畳の通りの途中に苔むして情緒のある不動尊が赤い襟巻きをして佇んでおり、参拝者が水をかけてお参りする感じのところです。長さも80mなんで、あっという間の通りにビッッッッシリ店が並んでます。

通り抜けるのもいいし、ちょっとお参りするのにもいいかも。道頓堀のグリコ看板からは、混雑の中をのったり歩いたとしても10分かからないです。

当たり前だけどお参りする場合には、小銭をお忘れなく。電子決済には対応しておりません。

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難波八阪神社

パワースポットらしいです。行く度にめちゃくちゃ観光客の方が多くてびっくりしていますが、やはりこのでっかい顔面の舞台が理由なのかな。

素敵なアクスタ・ぬい撮影ポイントです。

私はこれを龍だと思ってたのですが、東京からの友達は獅子だといい、在阪タクシーの運転手さんは鬼だと言ってました。正解は獅子でした。(東京の友達がファクトチェックしてくれました。大阪人たちはずっと「しらんけど」と言いながら曖昧な情報を流布していました。この場を借りてお詫びします)

 

オマケ:クルーズ

大阪は水の都を自称しており、こういったクルーズがいくつかあります。アクアライナーは個人的にもオススメかな。大阪城から中之島という大阪の良きところだけを見ることができる気がします。

道頓堀クルーズはよくわかりませんが、飛び込むよりはいいと思います。乗船するなら、昼より夜がいいかも。ネオンがきれいです。まあ昼間の川も抹茶カラーで綺麗っちゃ綺麗か……?近頃はニホンウナギもいるらしいですからね…。(大阪市:道頓堀川でニホンウナギが捕獲されました (…>大阪市の環境の施策>水環境)

 

ちなみにネオン映えなら、雨の日の大阪ほど最高のものはないので、もし観光が雨の日になった方はネオンチャンスです。

 

 

食べる

たこ焼き わなかアメ村店

道頓堀店からダラダラ歩いても10~15分くらい!激烈長蛇の道頓堀店でならぶな!!!こっちも美味しいから!!!

わたしはネギポンが好きかな~

店内にトイレもあるよ。席数は超少ないけど、運が良ければ座れる。たこ焼きなのでね、回転よくいこう!

 

 

OSARU COFFEE

前項で紹介した「難波八阪神社」から徒歩圏内。実はあまり教えたくないくらい、自家焙煎の超美味しいコーヒーのお店です。

店内は2階まであるけど席数は少なめ。テイクアウトもできるので、近所の公園で飲むのもいいかも。(近くにまあまあ公園ある)私はアイスカフェラテが好きです。

目の前が消防署なので、タイミングによっては出動風景を見ながら緊迫感をもってコーヒーを飲めるという、稀有な店舗です。いつもよりカフェインが脳みそを巡る気もするとかしないとか。

ちなみに、こちらのOSARU COFFEEがテクニカルサポートに入っている店舗が堀江にもあります。(↑わなかアメ村店から徒歩圏内)

2023年8月にオープンしたばっかりで、私もまだ未体験なんだけど、OSARU COFFEEがサポートしてるなら!!!という信頼で載せておきます。

 

 

SATURDAY NYC

ちょうどいい場所にあるカフェ。心斎橋から歩いてすぐです。このお店をスタートとして、北へ向かって路地を歩くのも小さいショップ多くて楽しいよ。店内ワンちゃんOKなので、犬アレルギーの人は注意。コーヒーもスイーツも美味しいです。

 

 

Brooklyn Roasting Company 北浜(中之島)

難波にも心斎橋にもあるんだけど、北浜のほう!!

サードウェーブの美味しいコーヒーが飲めるのはもちろんおすすめポイント。ブルックリンで飲んだ時に感動した味を、大阪でも味わえるのかと最高になったこちらのカフェ。

北浜店はコーヒーだけでなく、店内奥には川沿いにせり出したウッドデッキがあって、中之島や梅田を望むことができます。長居していると、前項でおすすめしたクルーズ船がいったり来たりしてて、カフェの客らとクルーズ乗客が手を振り合ったりなんかしています。

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ここから中之島は徒歩圏内なので、中之島公会堂や、中之島図書館、美術館などを散策するのもGOODです。

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串かつ 八重勝

結局ね~有名所だと八重勝が好きなんだよね。

エビ食べてほしい、エビ。ちゃんと二度漬け禁止の張り紙もあるので、写真撮ってもろて。ちなみに新世界は人通りの少ない方へはいかないように。土地勘ない方はマジで行かないで。通天閣の写真を撮って、明るい方へ明るい方へと歩いてください。守れる人だけ食べに行ってください。

 

 

喜八州総本舗のみたらし団子

喜八州のみたらし団子をご存知でない!???なら今すぐ食べて!!!新大阪にも伊丹空港にも店舗あります!!!美味しいです!!!小腹にめちゃくちゃキきます。

コロナを罹患したときも、友達に買ってきてもらいました。うますぎて泣きました。

曽根崎店が激烈にオススメだったんですけど、残念ながら閉店らしいです。おじいちゃんが網で焼いてたんです……。曽根崎店じゃないなら、どこでもいいです。

 

 

 

バターブレンド ダンケ

歩き疲れちゃってえ…。でもまだ喋り足りなくってぇ…。でも夜だし、どこもお店閉まり始めちゃってぇ…。スタバすらあいてなくってぇ…。

って時に入れるコーヒーショップ!23時30分まであいてる!すごい!

しかもコーヒーもとっても美味しいです。心斎橋大丸から歩いてすぐのところ。

 

 

番外編1:りくろーおじさん

大阪観光といえば、みたいな感じでみんなのテンションがあがってました。

 

番外編2:デパ地下

時期にもよると思うんですけど、レストランなどが閉まってる~みたいな正月とかは、こういうデパ地下もオススメです。(近頃は元旦休みなので、私も個人的に2日に利用したりします)

あと明日のパン買うとかね。朝ごはんとか。モーニングやってるようなカフェや喫茶店でもないかぎり、たいていの店は11時からオープンだったりするので、デパ地下で翌朝の贅沢を買っておくの、シンプルにありだと思います。

あとは、何食べたらいいかわかんない~!とかグループでそれぞれ食べたいもの違うとか、もうなんか疲れちゃってぇ…ってときとかね。デパ地下で買い込んでプチパーティするのも楽しいよ。

 

番外編3:SENNAN LONG PARKのスタバ

スタバであることは、スタバであること以外に説明が必要ないのでおいといて。

ここは車などの、何らかの足がある+関空利用がある、みたいな条件付きではあるんですけど、オススメです。

または、「りんくうプレミアムアウトレット」の利用ついででも良いのではないでしょうか。りんくうプレミアムアウトレットからは近いので、タクシーでもありだと思います。

ちなみに、アウトレット内にもスタバはありますが、そこのスタバにないものがこっちにあります。足伸ばす価値あるよ。

ここのビーチは最近整備されたばっかりで、このエリアの砂浜はとっても綺麗です。ただ個人的にここをオススメする理由は、ここのテラス席と窓際の席からだと、ちょうど関西国際空港が海の向こうにポッカリと浮かんでいるのが見えるから!

晴れの日なんか、特に最高です。

白い砂浜、青い海、その向こうに浮かぶ国際空港の人工島と離発着を繰り返すジャンボジェットの機影。

観光目的とはちょっとズレるかもしれないんですが、時間と余裕があるならぜひ。

 

番外編4:心斎橋大丸の9階「ジャパンポップカルチャー」フロア

用事がないので、私は足を踏み入れたことがなかったフロア。ここに何があるかというと、「ジャンプショップ」とか「ポケモンセンター」とか。(あと免税手続きとか旅行者向けの案内も)

まーーーじで韓国からの友人に大ウケでした。あと見た感じ、子供ももちろんたくさんいるんですけど、大人の海外渡航者も多かったです。

やっぱそういうのブチ上がっるんだな~と思いました。

余談ですが、ポケモンセンターは長蛇の列にかかわらず、レジ捌きが効率よくて素晴らしかったです。イラチの大阪人が言うので間違いない。すばらしい。

 

 

以上です!

またなんかあったら追記します!

あと551の豚まんはチルドの通販もオススメやで!

声を忘れない日があった

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乗るはずだった飛行機が大幅に遅延していた。

 

日本への帰国にあたり、乗り換えで立ち寄ったイタリアの空港。

多くの人でごったかえし、私が乗るはずだった飛行機は3時間遅れが更にのびて5時間遅れになっていた。

 

ひとり旅は十分すぎるほど楽しかった。

でも、「あとは飛行機に乗れば自宅へ帰り着ける」という状態から突如放り出されて感じる疲労はひとしおだった。

 

遅れているものは仕方ない。

それでも正直「勘弁してよ」というのが率直な気持ちだった。

 

同じように案内板を見上げる人たちが、これから帰る人なのか、行く人なのかは分からない。

それでも、みんな同じくどこか疲れたような顔をしていた。

 

とりあえず、少なくとも5時間は何もすることがない。

そのうえ、このあと更に遅延するのか、しないのか、その判断タイミングもわからなかった。

 

幸いにも航空会社からは食事のクーポン券が配られたので、飲み物とサンドイッチを手に入れた私は、とりあえず滑走路の見えるベンチに落ち着いた。

 

日本語のないアナウンスが引っ切り無しに流れるなか、いろんな言葉が飛び交う異国のサテライト内。

「あー、今のはドイツ語かなぁ」と分かるものもあれば、さっぱりどこの言語か分からないものまで。

音楽プレーヤーも充電切れだった私は、そんな「音」をBGMに、ぼうっと飛行機の飛ばない滑走路を眺めて、まさしく暇を潰していた。

 

それから、1時間か2時間経ったころ。

不意に意味の取れる言葉がたくさん聞こえてきた。日本語だ。それも、私がこれから帰る関西地方の方言だった。

ひとり旅でしばらくの間、日本語、しかも関西弁を聞く機会から離れていた私は思わず、声の聞こえてくる方へ顔を向けていた。すると、そこには日本人の団体客がワイワイ集まり、どうやらツアー内での点呼を取っているようだった。

なるほど、私と同じ飛行機に乗る予定の人たちらしい。

ということは、彼らも私と同じくあと数時間は立ち往生の仲間というわけだ。

まったく知らないひとたちだけど、そのことを何となく心強く思っていると、ふと、言葉以上に印象的な言葉が耳に届いた。

 

言葉というより、それは声だった。

 

「あれ?」と思ってその声の主を探してみれば、ツアー客の中に混じった一人の女性に目が留まった。

見覚えがある。

でも、誰だっけ?

思い巡らせて、彼女がツアー客に手渡している航空会社の食事クーポンに気付いてしまえば、すぐに記憶は蘇った。

 

彼女はツアーの添乗員だった。

そして、私が初めて一人で参加した海外旅行ツアーの添乗員をしてくれた人だった。

すでに5年か6年前のことだったけれど、他の人が二人以上で参加するなか、一人で参加していた私を丁度よい距離感でアテンドしてくれた彼女のことはとても色濃く記憶に残っていた。

特に、テキパキと必要なことを必要なだけ提供してくれるあの声は、混み合う空港内でも「そうそう、あの人だよ」とまさしくそのものだった。

 

私の見ている中で、ツアー客らはクーポン券を手にバラけていき、数人が彼女に声をけ、彼女が応答して、その数人もどこかへ移動したのか、その場には彼女一人になった。

 

そして、ふと振り返った彼女と目があったのだ。

 

「あれ、」

 

驚いたことに、目のあった彼女は私の名前を間違いなく呼んだ。

数年前に1週間だけ同じ旅をしただけの相手だ。

人は声から忘れていくというが、私は彼女の声を覚えていて、彼女は数多いるツアー客の一人でしかない私を覚えていてくれた。

互いに、不思議な縁だね、と驚いて、何となく孤立した遅延続きのサテライト内で、それからしばらく話をした。

昨日までどんな旅をしていたとか、これからどんな国にいくとか。

飛行機は結局、更に3時間遅延して、その間も彼女が仕事をしている時間以外にはいろいろな話をすることができた。

 

そして、ようやく飛行機の準備が整い、私と彼女はそこでわかれた。

 

「じゃあまたね」

「はい、またどこかで」

 

いろいろな話をしたけれど、私も彼女も、連絡先を交換するようなことはしなかった。

ただ二人で互いに「またどこかで会えるかもね」という言葉だけを交わしあった。

 

彼女が、またどこかの国で出会えたときにも、まだ私のことを覚えていてくれるかは分からない。

それでも私はまた今度も、彼女のハキハキと話す声につられて目を向けるのだろうと思う。

 

 

 

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

その夕暮れを思い出したい

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たとえば、夕暮れというものは割とどこで見ても美しい。

仕事からの帰り道、友達と部活終わりに立ち寄るコンビニの前、疲れ果てて窓から見た先、あるいは、旅先で見たそれ。

他にも、水はどこでのんでも水の味がするし、スタバのコーヒーはどこで飲んでも似たような味がする。美味しい。

結局、「やろうと思えば、近場でもできる」というのが、日本においてはまぁまぁ浸透した感覚なんじゃないかと思う。

 

それなのに、私は海外へ旅行したい。

 

ビーチでのんびり波の音を聞いて寝そべりたい。

美味い飯を食らってビールを飲んで、たまに訳の分からんメニューを頼んで失敗したい。

世界ふしぎ発見で見た絶景を自分の目で見たい。

絶景へ辿り着くまでに迷った時間の方が長かったせいでクタクタになった足を労りスプリングの効きすぎたホテルのベッドで眠りにつきたい。

 

 

たぶんこれだって、日本でだってできるだろう。
そりゃそうだ、日本にもビーチはあるし、美味い飯もまずい飯もあるし、絶景だって山ほどある。ちなみに富士山はすごかった。

それでもやっぱり、海外へいきたい。

 

そもそも、私が海外旅行をするようになったきっかけは、19歳の時に読んだブログだった。

 

その頃、私は半ばフリーターのようなもので、友人らが大学生活を満喫するなか、美容部員のようなものをしつつ小銭を稼ぎ、残りの時間はオタク趣味に費やしていた。

まぁぶっちゃけて、みんな新生活が忙しくなかなか遊んで貰えなかったので、まぁまぁお金もあって、暇もあった。

そんな時にいつものように巡回していたウェブサイトの管理人が、旅行記ブログをサイトとは別に運営していることを知った。

「へぇ~」と思ってクリックした先、まず目に飛び込んできた内容が衝撃だった。

 

同年代の女性
極度の人見知り
単身での海外旅行
英語力はほぼなし(その他外国語も同じく

 

え、ほんとに???というのが正直な感想だった。

まだバックパッカーとか、そういう女性がたくさんいることを知らなかったし、海外旅行なんてハードルバリタカのイメージしかなかったし、それこそ、ふしぎ発見ミステリーハンター?しかもスタッフ同行なし?ぐらいの衝撃だった。

その頃はまだツイッターもなく、ようやくフェイスブックが出てきたかな?あとはミクシー?ぐらいの時代でもあって、受動的でいる分にはなかなか情報も入りにくい頃だった。

だからこそ観測範囲に女性一人で海外、しかも英語力もさほどナシ、なんて人が居なかった私には相当なショックだった。

ただ、同時に強い興味もわいた。

年齢も同じぐらい、行くとしたら単身なのも同じ、英語力も似たようなもの。なにより海外への興味もある。

 

もしかして、私も行けるのか?

 

そう思いついたら止まらず、とにかく彼女のブログを読みあさった。

そして彼女のブログを読み終えた後には、似たように女性一人で海外へ出かけている方たちの旅行記ブログを読みあさった。

 

そこに綴られていたのは、旅人たちの宝物みたいな記憶だった。

 

ハワイで天体観測をした。
オーストラリアでエアーズロックを見た。
香港で美味しい飲茶を食べた。
イタリアで美術館三昧だった。
パリの街角で焼きたてのパンを食べてカフェオレを飲んだ。

 

もう、羨ましさが天をついた。

断っておくが、妬ましさではない。

ただただ、わたしもそれやりたい!という純粋な羨ましさが溢れかえった。こんなのいつ以来だ? 小学生の頃、鬼のように流行ったローラーブレードを買ってくれと親にせがんだ時以来じゃないか?(お小遣いためて買いました)

それから意識的にお金を貯めて、初めて一人でパリに行った。

19歳の11月だ。

英語もろくにしゃべれない、フランス語なんて挨拶を必死に覚えた程度。

しかも贅沢の仕方もよく知らない小娘の旅行で、今思えば、現地の方たちには途轍もなく愛想良くしてもらったのだなと分かる。

そんな旅行だったけど、忘れ得ぬほど楽しかった。

 

石畳を歩き続けると、めちゃくちゃ足が痛いことを知った。
11月のフランスは、すんごい日の出が遅かった。
日本で食べるよりフランスパンは固いし、クロワッサンは死ぬほど美味しかった。
マロニエの並木ってこれなのか、と落ち葉を踏んで歩いたし、心臓をこれでもかってぐらいバクバクさせながら郵便局で切手を買った。初めてのエアメールは母と自分宛に出した。
それからテレビで何度も見たことのあるルーヴル美術館に行って、中世絵画の部屋に入った途端に泣いた。石造りの、数え切れない人の足に踏まれて削られた階段を登り、薄暗い廊下から入ったそこは、目を瞬かせる明るさで、外より少し湿度が高く、びっくりするぐらい天井の高い部屋いっぱいに油絵の匂いを溢れかえらせていた。

もうすーーっごいビックリした。

当時の私はメデューズ号の筏がどういった背景で描かれたのかも知らないし、ナポレオンの戴冠式だって、それがナポレオンだと認識すらしていなかった。

けれども、その瞬間うけた衝撃と感動は、いつまでたっても心に残っている。なんで泣いたのかなんて分からない。だけど、とにかく心が揺れた。

 

それからというもの、私は海外旅行が大好きになった。

 

理由は、まだ上手く言語化してオシャベリすることができないでいる。それはちょっと悔しいなと思うのだけど、それでも私はわざわざ海外に行くのが好きになった。

疲れるし遠いしまぁまぁ高いし、日本でもある程度のことは出来るし、今時は現地に行かずともインターネットで情報は手に入る。

それでも、海外へ行くという選択をしてしまう。

 

なんでだろう、分からないけど好きなのだ。

たとえば、かつてワクワクしながら読んだブログ主たちもそうじゃないかと思っている。

あそこには、彼女たちの好きが山ほど詰まっていた。

豪遊しているわけでもなく、ユースホステルを転々としている女性なんかもいたし、金銭感覚は私も似たようなものだと思えた。お金を貯めては旅をする。そんな人たちの行動原理は、文字に綴られずとも、匂い立っていた。

 

旅行が好きなんだなぁ。

 

素直にそう思えるテキストは、とにかく何より魅力的だった。

そして実際、とんでもなく魅了されてしまった。

 

なんかもう楽しい。とにかく楽しい。

酷い目にも遭ったことはあるけど、何から何まで楽しい記憶の箱にぶち込まれている。

 

たとえばフィンランドへ行ったとき。

18時頃の片田舎の無人駅で5分ほど放置されたことがある。3月の半ばといえど、雪深く、外灯の一つもついていない。まさしく真っ暗闇の雑木林のただ中で、たった5分といえど死を覚悟した恐怖はなかなかだった。

だというのに、数日後に見たオーロラに感動しすぎて、その時の恐怖はほとんど思い出すことが出来ない。あんな泣きそうだったのに。(泣くと凍るので泣かなかった)

 

あるいはハワイ島へ行ったとき。

ホテルの部屋でハエが大量発生していて発狂しかけたが、夜に見た天の川が綺麗過ぎて何もかもどうでもよくなった。
あの夜、途中で数えるのを諦めたほどの流れ星は、流星群でもないのに圧巻だった。

 

他にもまだまだ、山ほどある。

良い経験も、悪い経験も、どれもこれも海外旅行ってフォルダに入れば、どういうわけか良かった思い出になってしまう。

不思議なものだけど、好きだから、そういうもんなんだろう。

それに、そのどれもこれも、私が今際の際に立ったときには何か小洒落たBGMをつけて走馬灯で流れてくるに違いない。「あ、この夕暮れはアレだよアレ、20xxに行った時にぼーっとやることなくてビーチで眺めてた夕焼けだよ、あれ人生で一番綺麗だったなぁ」なんて思い馳せながら死ねたらまさしく上々だ。

日常の強い記憶の合間にそんなの流れてきたら、温度差で生き返るかも知れないけど。

いやそもそも、走馬灯がリクエスト制かどうかも知らんけども。

そうだったらいいな、と思う程度にはやっぱり特別好きな海外旅行で得た記憶なので、是非とも願いを聞き入れて、例えばオカンとゲラゲラ笑い合ってる記憶の次ぐらいには流して欲しいものだ。

 

そしてどうか、私の走馬灯リストを更新するためにも、また早く海外旅行ができる世界に戻って欲しい。

それこそ、山とある課題をクリアせねばなるまい、なんてことは重々承知しているけれども。何のチカラもない私には欲望を願いながら、数少ないできること、手洗い・うがい・ソーシャルディスタンスを遵守する程度しかできないので。

 

あ~~~はやく海外旅行したい~~!

一日でも早く、また海外旅行が自由にできる世界になりますように!(制限付きでも良いから!)そのためにも、惜しまず出来ることは頑張ります。